朝起きてすぐにみんな私が嫌いなんだと胸の中が囁く。
10年か20年以上前の言葉達が響き渡る。
もっと眠っていればよかったと思う。
こんな記憶が最初からなかったらよかったのに。
どうして私は学校なんかに行ってしまったんだろう。
私は誘拐された場所でお外に出ずに暮らしてて、
学校なんてもちろん知らなくて、
お父さんとお母さんが心配しているんだ。
子供の頃からそんな夢を見て生きていた。
私はこの王子様願望に近い夢を今でも持っている。
本当は母性や愛情飢餓なのかもしれないが、
悪い奴を倒してくれる信頼も欲しくて、
正義の味方だと博愛的で距離が遠そうで、
なんとなくこういう呼び方になっている。
愛する者の為に他の者を排除してくれる人、
なんて言葉を一言で表すのは難しいかもしれない。
結婚して誰とも顔見知りにならない生活をした上で、
今でもそういうことを考えてしまうのだ。
だからきっと正確には今誰かが必要なのではなく、
記憶に汚されたくなかっただけのことなんだろう。
父のことも母のことも、学校のことも、
何もかもをただ知りたくなかった。
夫から情熱がないって言われる。
現実という私を嫌う世界に対し、
私はどう好意を持てばいいのか今でもわからない。
フラッシュバックが辛いから薬は貰いに行く。
だけど医者とのやりとりにいつも困る。
医者が見ている世界と私が見ている世界が違う。
私は過去の私の記憶からしか作れない。
だから未来とか自分とか他人の成功例とかから、
希望を見出すことが出来ない。