宗教2世の孤独

キリスト教徒から生まれた母は宗教2世

母は私に宗教を継がせることはなかった

しかしそれは宗教から解放されることではなかった

 

隠れキリシタンの島で育った母にとって

キリスト教というのは子供の頃からの常識だった

母は礼拝をしなければキリスト教から離れられた

恐らくそう思っていたのだろうけど

あらゆる価値観がキリスト教に染まり

その判断は子供への過干渉を生んだ

 

こんな野蛮なものは見て欲しくない

いじめられてもいじめられる貴方が悪い

いじめている人の良い所を見ない貴方は性格が悪い

母にとっては人の心などはなく

キリスト教の教えに沿うかどうかでしか

人の言葉を返すことしかなかった

父は空気のような存在になり

子供達は精神疾患を複数抱えるようになった

母の思う聖人にならないと

家族は何度も人格否定をされて母に殺される

この家には神は当然いないけど

まるで屋根も壁もない野ざらしの中で

常に襲われる恐怖の中にいることになった

 

母は末っ子だったけれど

しっかり者のお姉さんに連れられて都会にきたらしい

そのさらに上にも兄弟がいるらしいけど

一番上のお兄さんも精神疾患を抱えていて

ずっと家で親代わりをしてくれていたようだった

一番上のお姉さんはよその人の悪口が多いけど

耳が遠くて大変そうにしていた

虐待の話を見てきたから知ってしまったけど

一番上の二人はずっと苦しめられてきた人で

だから下の二人はなんとか家を出られたんだって

一番上のお兄さんはヤングケアラーで宗教二世で

とても苦しかったんだろうし

一番上のお姉さんもきっと私と似た被害を受けて

理不尽への怒りを一人で抱えてたのかなとか

そういうことを考える

 

母は二人しか生まなかったから被害が集中して

みんなおかしくなってしまった

私は兄弟を母から逃げ出させてあげられなかった

一人で何かを始めようとするだけで

自律神経がおかしくなって倒れてしまう

私が外に居場所を作ってあげることは無理だった

出来れば結婚して落ち着いた逃げ場を作ってほしい

それほど人に対する壁を破壊されてしまった私たちは

複数人で生きる場所では生きていくことが出来なくなった

母が芽を摘み続けられた私たちは本当に生きることが難しい

兄弟の差別もあったから完全な味方に私はなれないだろう

漠然とした不安と苦しみと無力感が胸を締め付ける

この無力感からどうしたら解放されるのだろう